お家で試験

お家で試験

イギリスのボーディングスクールでリモート学習が導入されて早や2か月。この状況下で早々に中止が決まったのが今年のAレベル、GCSE試験。一方、プレップ生(小学生)にとっての中学入試、Common Entrance(CE)は何とか実施されることになりました。ただし、学校が再開しない見込みの今、今年はなんと、「各家庭で」保護者の監督の下に行うことになります。もちろんこれはCE始まって以来の珍事です。

 

CEは中学入試といっても、そもそもが最終見極め試験として行われるため、めったに不合格にはなりません。異例の今年はシニアスクールとしてはCEは免除、全員の合格を決めたため、CEはプレップのほうが任意で「力試し」試験として実施する形になりました。それでも、試験結果は参考までシニアスクールに報告されるとあり、本番さながらの慎重な準備と実施上の指示が与えられます。突然試験監督を言い渡された親御さんはきっと少なからず責任を感じていることと思います!

 

試験問題は試験日より前もって親に配布され、答案用紙も親が提出します。ボーディングスクールに集まる留学生の自宅は地球上のあらゆる地域ですから、それぞれのタイムゾーン内で受けても構いません。ということは、一部の生徒は他方の生徒より早く試験問題を見てしまう、ということです。「試験問題漏洩」、「不正行為」なんて言葉がすぐに過りませんか?しかし、プレップは一定の対策を敷き、監督方法のガイダンスを親に渡しますが、「これまでの皆さんの頑張りを発揮する機会が作れてよかった」、「しっかりと正当な評価が下されるよう頑張って」と、あくまで各自の良識に任せるスタンスです。それどころか、普段の力が発揮できなかった生徒がいたら、シニアスクールにフォローのメッセージまで添えてくれる、というのです。ここまで言われたら、むしろカンニングをしようなんて発想が消えてしまうのではないでしょうか。もちろん批判もあるのかもしれませんが、学校は自分たちのやり方に揺るぎがありません。このような異例措置は今年だけと願う一方、今回の件を傍観しながらイギリスの学校がいかに父兄や生徒からリスペクトされているか、そして、危機に慌てることなく、淡々と、工夫をもってベストを尽くしている姿勢に、これからの予測不可の世の中を柔軟に生き抜く術と力を見た気がしました。

 

ちなみに、試験は連続4日間に及びます。例年、試験終了と同時にキャンプに出掛けたり、楽しいイベントに参加を用意したり、とご褒美を用意している学校がほとんど。子ども達はその解放感にしばし仲間と酔いしれるのですが、今年はそれが叶わないため、オンライン上でお互いを労うことになりそうです。渡邊オフィスにも、仲間と「お疲れさま」をしたいために、あえてイギリス時間で試験を受けるという留学生もいるんですよ。その純粋な気持ちがまたよいなと感じ入ったのでした。

 

山岸