かかりつけ医

かかりつけ医

新型コロナの影響で、日本で「かかりつけ医」制度のディスカッションが盛んになってきました。イギリスの「GP制度」はまさにこのかかりつけ医制度であるということは、留学生や留学生の親御さんならすぐにお気づきでしょう。

昔からこのGP制度を敷くイギリスでは、人々は出生時からGPに登録をします。ボーディングスクールの留学生は校医が自動的にGPとなります。GP制度の利点の一つは、「自分を長く知ってくれているいつでも頼れるドクター」が身近にいること。ただし、まずは診察に予約が必要で、一定期間待たされることが難点の一つ。ボーディングスクールの校医も毎日校内で診療しているわけではないので、救急の場合以外は次の診療日まで学校のナースが当座の手当をしたりします。私も留学中にGPとの予約が3日後にしか取れず、診察の時にはすでに症状が消えていてバツの悪い思いをした経験があります。その時は、「日本だったらもっと早く処置してもらえたのに」と制度の違いを恨めしく思うしかありませんでした。

日本での「かかりつけ医」制度導入にはまだまだ課題は多く、実現するとしても数十年かかる見込みといいます。導入呼びかけには複合的な理由があるようですが、コロナ蔓延時の混乱を抑制するための「かかりつけ医」制度だとすると、果たしてこの議論は本当に必要なのか?と疑問を持ってしまいます。というのも、イギリスではコロナはすでに普通の風邪。かかったら自宅療養するのが基本ですから、感染したからといってすぐにGPに頼る人は多くはないはずです。日本でも最近は自宅療養をハッキリ推奨しているので、「かかりつけ医」制度導入の動機付けとしては弱い気がするのです。イギリスでは今や病気になったら病院ではなく自宅診療を基本にという考えの下に医療が動いていると言いますから、日本はかかりつけ医制度で議論している間にその先の課題に直面しそうです。

さて、渡邊オフィスとしては、この議論により日本でのイギリスの「GP制度」の理解が進んだという点を多いに喜ばしく思っています。

山岸