イギリスでいう「贈り物の達人」

イギリスでいう「贈り物の達人」

大切な人への贈り物やお返し。喜んでほしいからこそついつい考えすぎて頭を悩ませてしまうことがありますが、これはイギリス人同士でもよく起こることです。なんといっても贈り物を交わす文化が豊かな国です。毎年必ずやってくる家族や友人の誕生日、クリスマス、バレンタインデー、父の日、母の日、その他様々な記念日に加え、出産、洗礼式、堅信礼式、卒業祝い、就職祝い、結婚式など、人生の節目の儀礼にも贈ります。特に誕生日に対する特別感が強く、歳を取ったからといって思い入れが薄まるわけではありません。 常にプレゼント選びに追われているように聞こえますが、ギリギリになって焦らずにすむように “できる”人はそれなりの準備をしているようです。習慣としてよく見かけるのは、新しいスケジュール帳を購入して真っ先にすること。老若男女を問わず、自分の誕生日を記入した後に、記念日やお祝いの日を記入していきます。そして、白紙のページにクリスマスまでにすることをリストアップする。これは、ただ単にまっさらなページを埋めたい欲求からだけではなく、プレゼントの準備を管理するために行っています。特別な日に間に合わないと、六日の菖蒲十日の菊になってしまうからです。

さて、皆さんは贈り物をするときに先ず何から考え始めますか?私は相手が喜ぶようなものを真っ先にリサーチする癖があります。しかし、多くのイギリス人にとってポイントとなるのが、どうやって渡すのか。直接渡す機会があるならそれまでに贈りたいものを自由に選べば良いのですが、そうでないと話が少々ややこしくなります。郵送する=郵便や運送会社を完全に信じるということ。イギリスの郵便事業「ロイヤルメール」は、近年配達日時の設定や再配達のサービスを導入しましたが、まだまだ設備が整いきっておらず、ストライキも多く、なおかつ未だに荷物の扱いが荒いことで有名です。その他宅配サービスにしても、個人から個人に送るとなると高い送料が発生します。ここで“使える”のがオンラインショッピングで、しっかりと梱包したものを、独自の配送網または配送業者の確保によって比較的安く(または無料で)設定した日に配達してくれます。手間がかからないと人気がある一方、贈り物を送る方法としては全く人間味が感じられないと、納得がいかないイギリス人は多いようです。

話がグルグル回ってしまっていますが、好みのラッピングペーパーで包み、直筆のカードを添えたものを遠方の人に贈りたいときにはどうするのか?答えは二通り。①贈りたい相手に会う知り合いを前もって探し当て“運び屋”になってもらう。②自分で届ける。先ほど触れたように過ぎてしまってから渡すのはタブーですが、事前に渡しておくことは通常大いに歓迎され、このやり取りは日常生活の中でごく自然に行われています。そして、ハロウィーンが終わりクリスマスソングが聞こえてくる頃から、自家用車で親戚・友人の家を廻るリアル・サンタクロースが出没し始めます。ここまで計画性を持って贈り物と向き合っている人には心から感心してしまいます。私自身誕生日の半年前にプレゼントを渡されたり、出張先や旅行先に贈り物を届けるロバのお役目を頂くことがあり、持ちつ持たれつの素敵な文化だなと思ってはいるのですが、それと同時に時代に負けじまいと改良を続ける日本の郵便事業や宅配業者の方たちへの有難みが増々大きくなっていきます。

次回ブログでは、親御さんからもよく質問される「イギリスでお世話になっている方たちに贈るプレゼント」についてお伝えしたいと思います。

矢部