サッカーのことはよく知りませんが

サッカーのことはよく知りませんが

ワールドカップ2010が開催中です。正直、出張中に開幕したことをぼんやーりとしかわかっていなかったほど疎い私ですが、タクシーに乗る度にこのサッカーの話題が飛び出し、実況さながらの報告を聞かされましたっけ。先の国際試合で日本がイングランドと戦った時のオウン・ゴールについても、ある日に出会ったドライバーさんが嬉々として教えてくれました。きっと、私が日本人とわかった瞬間に、この話題を伏せておくなんて出来なかったんでしょうね。まぁ、かまやしません。

さて、今回、ヒースローに降り立ってからやたら目についたイングランド国旗。白地に赤い十字のあれ、ですね。まず乗用車が翻していることが多いです。そして民家の窓。そしてMarks & Spencerのサンドイッチにまでも! ~バーガーバンズのようなミニの丸型白パンの上面が、ケチャップで十字を引いたように模様を入れて焼き上げてあります。サッカーボールの絵柄と「ふれーふれーイングランドぉっ」(注: 正しい文言は記憶にありません)のようなエール全開なパッケージ。サッカーネタの話題も多く聞かれました。ある晩に再会した渡邊オフィスOGが、「イングランドチームのオフィシャルTシャツは40ポンドもする!」と、不当に高いと言わんばかりな様子。また、滞在中に訪ねた女子校の寮長先生は、「4時からの試合を見るためにメキシコ人の生徒に寮でTVを観る許可を出したの。」と明るくおっしゃっていました。固そうに見えていいところある!4年前も8年前もこのように特別許可をもらって日本の試合を生で観た留学生たちは多かったですよね。授業がそのまま試合観戦になってしまったなんていうのも聞いたことがあります。

ところで、先に登場したタクシードライバーさんいわく、「自分の子ども時代はオヤジとサッカーを観に行くのが習慣で、それが庶民のレクリエーションだった。なのに最近はプレミアリーグの試合は入場料が高くなって、交通費をかけて行ったら大変なお金だよ。子ども達にスナックの一つやビールでも買えばもっとかかるし、滅多に行けなくなっちゃった」。そういえば、別の日に会ったある若きセレブのお父さんが、「毎週息子とチェルシーの試合を観に行くのが楽しみなんだ」と目を細めて言っていました。そのスマートな紳士と有名校に通う息子がサッカースタジアムに通う姿を想像して、若干の違和感は持っていたんですが、ドライバーさんの話を聞いて「そういうことだったのか!」としっくり来ました。サッカーのお蔭で、たくさんの「なるほど」に出会う旅でした。       山岸いつみ