バブル

バブル

今年の東京五輪のコロナ対策では“バブル”方式を取り入れ、選手の感染を防ぐという報道が目に入りました。バブルとは一定数の人がグループを形成し、そのグループで行動、生活をすることにより例え感染が起きてもグループ内だけに感染を閉じ込めるというもの。このグループをバブルと呼びます。

「やっと日本でも『バブル』という言葉が使えるようになった!」。これがニュースを聞いた私の咄嗟の感想でした。イギリスのボーディングスクールでは、このバブル方式を昨年の6月頃からコロナ禍の学校再開時の対策として一斉に打ち出していました。ご存知にように日本でバブルと言えば、バブル経済を連想する言葉。父母の皆様に説明する際は、このバブルと混同されないよう長い説明が必要でした。しかし、コロナ対策としてのバブルの意味が日本でも定着すれば、今後は単語一つで説明がつくようになります。やれやれ。

私が渡邊オフィスで働き始めた30年ほど前、英語をそのままカタカナで使用することは極力避けていました。現在ほどには一般の方々に横文字使用が浸透していなかったからで、外国を相手に仕事をしているからこそ、カタカナでごまかしてはならない、という自負もありました。この仕事で頻出する単語、「ボーディングスクール」、「アドミッション」、「コミュニティー」、「フライト」、等々、日本語に置き換えるのは時に厄介でした。また、英語がそのまま広く使われていても、違う意味を持って浸透している場合は要注意です。アプリケーション(アプリの意と出願の意)、チューター(家庭教師の意と担任の意)などがそれです。しかし、多くの英語が徐々に日本語として広く使われるようになり、意味やニュアンスに差異がなければそのまま使える場面が増えてきました。ありがたい傾向です。

近い将来、私たちの作る文章がカタカナだらけになる日が来るかもしれません。そうだとしても、留学生達にとっては「バブル」は外来語ではなく、実体験を通して身に着いた言葉「bubble」として定着しているわけですね。体験とセットで覚えた言葉は一生忘れません。それがカタカナでも横文字でも、本来の意味を外すことはないのです。

山岸