フクザツはフツウ

フクザツはフツウ

先日、久しぶりに仲よしの夫妻と食事をした。二人はイギリス人のご主人Sさんの引退を機に、奥様Aさんの故郷日本で暮らしている。今年は3年ぶりにイギリスに帰るという。Sさんの弟さんの義理の息子さんの結婚式に出席するというのだが、弟さんはこの義理の息子と暮らしたことはない。Sさんは、日本からこの結婚式のために渡英することに何の疑問も持っていないが、傍若無人な振舞いをする一人の親類のために少し行く気を削いでいるらしい。話の最後にSさんに「これが日本だったら、そもそもそんな結婚式には呼ばれないから無用の心配なんだけど。」と言ったところ、Aさんは味方を得て満足そうに頷いていた。

イギリスは欧米の中でも離婚率が高い国と言われている。確かに42%はたいそうな数字と取れる。一方、再婚する人も多いので、Sさん家族の話に象徴されるように、義理の親、義理の子供といった関係が埋まれやすい。ただ、誰とも断絶することなく大抵は良好な関係にある。ご存知の方も多いと思うが、渡邊オフィスの留学生には一人に一家庭ずつのホストファミリーがいる。その中でも、「本当の両親と子ども達」だけで暮らすホストファミリーはごく僅か。親御さんにホストファミリーの家族構成をお伝えする際、「これがイギリスのノーマル」と強調しなければならない。

さて、今回のSさんのように、イギリスでは「義理の関係」者同士が普通に冠婚葬祭で顔を合わせる。興味本位で調べたところ、イギリスのあるホテルのウェディングのホームページに新郎新婦の親が離婚している場合の座席の決め方やバージンロードを実父と育ての父のどちらと歩くか、参列者をお見送りする立ち位置は?とあらゆる悩みへの回答が紹介されていた。ホテルからの一貫したアドバイスは、「できるだけ関係者を全員仲間に入れて(include)あげましょう」というもの。なるほど、「include」だ。イギリス人が日常からこうして「include」精神を養っていることが、イギリスという国が留学生のみならず多様な人々を受け入れ共存することに長けていることに繋がっているのかもしれない。思い返せば、スコットランドの山でばったり出会った私をSさん夫妻は快く家に招き、留学中何かと親切にしてもらった。Sさんが気を取り直して式に出席できるよう、次は励ましてみようと思う。

山岸