卒業シーズン

卒業シーズン

天気は冬なのか春なのか微妙な日々が続いていますが、日本は卒業シーズンですね。留学生のご兄弟で卒業したみなさま、ご卒業おめでとうございます。ご存知の方も多いと思いますが、イギリスの学年末は、6月。約2ヶ月という長い夏休みの直前にお祝いです。今回は、個人的な話になってはしまいますが、私の経験した卒業式の話などしてみたいと思います。 

私は小学5年生の終わりで留学を始めたため、日本の卒業式も、修学旅行も経験しませんでしたが、日本の友人から聞く「卒業式」はひどく感動的なもので、みんなで泣いたり、憧れの先輩としてボタンが欲しいとリクエストされたり、とにかくも、ドラマや映画のシーンが決して大袈裟ではない、本当に「別れ」を象徴する一大イベントなのだと認識していました。私は語学学校の研修後、シニアスクールの一年生として入学したので、18歳の卒業式が、実に幼稚園の卒業式ぶりとなりました。皆が辛かったGCSE, 重なるエッセイの締め切りに泣いたA-level, 友人と一緒に給食のヨーグルトを学食から持ち出し、バスルームの順番待ちで喧嘩をし…寝ても起きても一緒に過ごしてきた仲間達との別れ、日本から母親も駆けつけてくれ、お世話になったガーディアンさんもご出席下さり、いや私なんかの卒業式でも感慨深いものがあるじゃないか…と式典に出たわけです。
ところが。
誰も泣かない。もちろん、私も泣かない。会場がそういう「感動的」な空気じゃないんですね…。あっさりと式典は終わり、寮から溢れる荷物を運び出している間に、クラスメイトに呼び止められては、今までの学期末と変わらず、「良い夏を!」とハグされ、「じゃ、またね!!」と皆、自分の家の車に乗りこんでいく。ロンドンの美大に進学予定だから、いつでも会えると思っていたのか…卒業前日に恒例の、校内に仕掛けるイタズラを完遂し満切ってしまっていたのか…。当日、感慨深く別れの握手とハグをして下さったのは、懇意にして下さった教師の方々のみ…。皆、私との別れより、初めて会う私の母との挨拶に盛り上がり、その様子に母も多少、拍子抜けだったようでした。 
いつかどこかで会える!会おうと思ったらどこでもいつでもどうにか会える!というイギリスのモットーなのか。ジメジメしたのは趣味じゃないのか。いやでもあれはカラ元気とかじゃない。普通の、またね、だった!自分も車に乗りながら、一応校舎を振り返り…私のボーディング生活は幕を閉じました。 
渡邊オフィスの卒業生には、このブログを読んで、いやいや、私は号泣でした!僕は感動しました!と思う意見もあるでしょう。私もたまたま私の学校が、私の学年がドライだったのだ、と思いたいところです。 
とにかくも、私が体験した卒業式は、日本の卒業式から想像していた重々しく美しき別れではなく、お疲れ!夏(休み)を楽しんで、また頑張ろうね!と、次のステップを意識した挨拶であり、大学どこに行ってしまうの、イギリスからいなくなっちゃうの、という寂しさより、絶対また会おう!という無責任なまでの明るいものでした。でも、私はこのイギリスらしい、カラッとした卒業式を物足りなく思うこともなく、今となってみれば、これがイギリスの(学校)生活にすっかり順応した表れだったのかもしれません。 
…とは言えど、大切な留学生活の節目、今年の卒業生達にとって、後悔のない、充実感のある卒業式になることを今から願っています。
鈴木元子