天候変化と国民性の危機

天候変化と国民性の危機

気がつけば11月も半ばですが、イギリスでも日本でも季節外れの陽気が続いております。ちっとも霜月の気配が感じられませんよね。日本にいる私たちにとっては、紅葉や旬の食材をいつもより長く楽しめ、清々しく行楽シーズンを過ごせるのが嬉しいですが、イギリス国民にとっては心配の種のようです。
ほんの10年前までは、「夏!」と主張するほどの夏は存在せず、秋は霧多く気付く前に通り過ぎ、その後の半年は雨が多い冬季が当たり前でしたが、最近では毎夏のように熱波が押し寄せ、秋か冬かの判断が難しい天候が続いているようです。要するに、イギリスらしい気候が失われつつあるのです!

毎日の生活においては、イギリスに住む必須条件として納得せざるを得なかった”気性”の荒い気象が和らぐと、良いことばかりに思います。が、これが長続きすると、国民性自体が変化していく可能性があり、「イギリスらしさ」の概念に極度な誇りを持っている国民としては、完全に喜べないようなのです。雑論ですが、好天によってポジティブ思考になれば、国としての生産性は向上するかもしれませんが、イギリス特有の皮肉を基とした機知に富んだ話し方をする人が減り、文化の深みがあるイメージが薄れるかもしれません。悪天候のため家で待機することが少なくなれば一日にそう何杯も紅茶を飲むことも、会話を繋ぐために天気の話を利用することもできなくなるかもしれませんね。このように両側面から見ると、イギリス人が今後どのように適応していくのかが興味深いです。

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