日本人は数学が得意?

日本人は数学が得意?

世界で一番数学が進んでいる国はどこか、となると答えはとても難しくなります。例えば、研究面での数学を指すのか、全人口の平均値を指すのか、たぶん答えは様々でしょう。インドや韓国などのレベルが高い話も耳にします。

私が留学した1960~70年代は確かに「日本人は数学が良くできる」と言われており、ほぼその通りでしたし、確かに小中高ではイギリスの方が遅れていました。その上、日本人は計算が速い。店でおつりを貰う時にイギリスの足し算方式にイライラしたものです。(今はカード決済でこの光景は稀になりましたが!)たぶん多くの日本人の留学生は長年「日本人だから数学は得意だろう」と言われてきたことでしょう。現代でも日本人全体を比較すると日常的な「計算力」のレベルは高いと感じます。公文式が世界に広がっているところからも、九九の速さからもそれは明らかでしょう。

では現在の小中高での算数・数学のレベルはどうでしょう?留学前の親御さんからよく聞かれるのは、「イギリスは数学が日本より遅れているのではないか」です。本当でしょうか? 意外なことが分かりました。長年日本の教育からイギリスの教育に移行する留学生を見てきて最初に違和感を持ったのは「小学校のゆとりの教育」が導入された頃です。同じ小学校に通っていた兄弟の算数のレベルが大きく違ってきたのです。留学のための入学試験の数学の点数もその頃から下がってきました。イギリスの学校が年齢別に出す数学の入試問題で日本ではまだやっていない範囲が登場するようになったことにも起因しています。英語の入試で点が取れないのを数学の点でカバーしてきた留学生にとってこれは大問題です!

では何が違うかの例を挙げてみましょう。日本では長年「代数は中学になってから習うもの」というのが通念になっていますが、イギリスではなんと小5の時点でXが登場する一次方程式がカリキュラムに導入されています。また私の時代は中学で学んだ三角関数(サイン、コサイン、タンジェントです)も日本では今は高校のカリキュラムですが、イギリスでは中学レベル。たまたま進学校に在籍した子は先取りをしているかもしれませんが、そうでないと、高校一年生からの留学生は苦労することになります。またイギリスでは統計学も中学の数学に取り入れられているのも日本と大きく違う点です。

このような学年を基準として数学の進み具合を論じるのは、かなりナンセンスだと思います。ちなみに留学の最後を見ると、平均的に日本人は「数」に強く、数学の成績結果は優秀です!

渡邊