春を信じて

春を信じて

今世界を悩ますコロナウィルス。肺炎や熱などの物理的な症状よりも、日々の情報に左右され、心を病んでいく人が増えることが心配されます。

 

「こんな時だからこそ静かな時間を楽しみ、良質な本を読みなさい」。イタリアのある学校の校長先生のスピーチが今週は話題となりましたが、わたしはこの一文に心を打たれました。

 

学校が休校になったことにより、共働き両親の「働けない」問題ばかりが取り上げられていますが、その先生の一言で、本当の犠牲者は「勉強ができない」子どもたちだと気づかされました。もちろん自主的に勉強する子になる良い機会、均質教育を脱するべき等の意見もあるようですが、そんな混沌とした状況下で、「本を読む」という小学生以上ならそれぞれのレベルで誰もができ、誰にも迷惑をかけることなく楽しめる娯楽を当たり前のように提案された先生は素晴らしいと思いました。

 

いつもは読まない本、例えば詩集は考える力を豊かにし、時に暗い気持ちも温かくしてくれる本の一つです。私自身がGCSEを受験する際に勉強をした19世紀後半に活躍したトーマス・ハーディというイギリスの詩人の詩を一つ紹介します。

 

I Watched a Blackbird

 

I watched a blackbird on a budding sycamore

One Easter Day, when sap was stirring twigs to the core;

I saw his tongue, and crocus-coloured bill

Parting and closing as he turned his trill;

Then he flew down, seized on a stem of hay,

And upped to where his building scheme was under way,

As if so sure a nest was never shaped on spray.

 

ハーディは小説家としてのほうが知られているかもしれませんが、彼の詩はいつも心優しく、大英帝国繁栄の陰で苦しむ貧乏な人々や,戦争で死んでいく兵士たちの無念さを思いやる心温まる詩をいくつも残しています。ドーセット出身だったこともあり、自然をこよなく愛し、動物の詩も多くあります。上記の詩は、春の訪れと希望を、つぐみの姿と巣作りの様子を通して表現しています。心穏やかに、こんな時だからこそ春を信じて前向きな気持ちでいたいと思います。

 

鐵屋