絵画をAIで鑑賞する?

絵画をAIで鑑賞する?

昨年のことですが、ロンドンのナショナルギャラリーで展示されている著名な絵画のひとつ、ルーベンスによる「サムソンとデリダ」という作品が偽物である可能性が高いと話題になりました。この作品は1980年にナショナルギャラリーが現在の価値で約10億円もの高額で購入し話題となった一方で、当時から一部の専門家からは偽物ではないかという指摘があったそうです。

長い歴史の中で、絵画の真贋は幾度となくニュースになりましたが、今回注目すべきは偽物だと判断したのがAIだということ。このAIは、スイスを本社に置くArt Recognitionという会社が開発したもので、同一の画家の作品を複数枚データとして読み込み、特長や筆遣い等を分析し、対象の作品の真贋の可能性を割り出すことが出来るそうです。Art Recognitionの代表であるDr. Carina Popoviciは素粒子物理学の博士号を取得後、スイスの金融業界でリスク分析の専門家として活躍した経験から、物理学と金融商品としての絵画を融合させ、このAIを開発したそうです。これまでのいわゆる絵画だけを研究してきた“専門家”とは違うフィールドのご経歴に驚きますが、さらにこの会社のメンバーは数学者・科学者が多いそうで、アート業界が変わっていく風を感じています。歴史や文化に新しい技術を取り入れて改めて検証・分析するとうことは、長い歴史を持ちながら新しいものを自然に取り入れていくイギリスらしく、今後、このようなケースが数多く見られそうな予感がしますね。

ちなみに、本作は91%の確率で偽物だと分析されたそうですが、ナショナルギャラリーは、現段階でのコメントを控えると発表したきりで、ナショナルギャラリーのWebサイトにはまだしっかり作品が掲載されています。今のうちに作品の真贋を考えてみるのも面白いかもしれません。是非ご覧ください。

https://www.nationalgallery.org.uk/paintings/peter-paul-rubens-samson-and-delilah

後藤