英国の田舎:in the country

英国の田舎:in the country

長年この仕事をしていても、異文化の違いを説明するのは難しいとつくづく思います。その一つが「田舎」という言葉。 かなり前にTVで「故郷=ふるさと」という日本語の感覚を説明するのが難しいという番組をみたことがあります。そうですね、田舎と故郷は意味が違う。日本人であればその違いは説明されなくても分かるのですが。 故郷でない「田舎」という日本語は都会中心の日本では、ともすれば、文化的でない、寂れた、辺鄙という形容詞が付きかねませんし、あまりポジティブな言葉とは取りません。 その田舎を英語にするとin the countryまたはCountrysideとなりますが、英国人が「in the country」と使う時はほとんどが「良い」意味なのです。 英国人の理想の暮らし方は、決して都会に住むことではなく、in the countryに広々とした邸宅を構え、良い空気と緑に囲まれた人間的な生活をすることなのです。 ですから若い時は都会に居ても家族を持つと皆in the countryに移り住むことを考えます。都会に出るのは、仕事や美術館、劇場に行く時だけで十分。ですから、実は英国の「田舎」はとても洗練されており、文化人が好んで住んでいます。 例えば、大学を選ぶ時も日本人だと、すぐに東京、大阪、つまりロンドンを考えそうですが、ほとんどの英国人がロンドンを避けたがります。 英国の学校に長くいた留学生達もすっかり英国式になる者も少なくなく、「ロンドンだけは嫌なんです!」と言い始めるのです。

 

これから留学をするという方達とお会いすると、まだ時々「ロンドンの学校に入れたい」とリクエストをいただきますが、英国人の感覚からは、子供達の教育に最も良い環境はロンドンにはありえないとなりますから、まずはBoarding Schoolはロンドンにはないのです! たぶん日本の感覚だと、田舎にある学校は田舎の人が行く?という図式になるのだと思いますが、これがまったく違うのです。 ちなみに王室の王子たちが通ったプレップスクールの周りは何にもない田舎。自然こそが宝といったところでしょうか。 この夏も、シニアスクールを終了した子達のご父兄がいわゆる「卒業生のパーティー」に出席するために渡英されました。そこに集まったそうそうたる親たちを見て、英国の「田舎」の意味が少し理解されたのではないかと思います。

渡邊

イギリスのボーディング・スクールはもちろん、習慣やちょっとした豆知識について毎週ブログで紹介中