11月11日とポピーの花

11月11日とポピーの花

イギリスで11月11日は「Remembrance Day:第一次世界大戦終結を記念すると同時に戦没者を追悼する日」となっており、Remembrance Sunday(11月11日に一番近い日曜日)には全国民が2分間の黙とうをささげます。歴史的な背景もあり、日本では「第一次世界大戦の終戦」というのはあまり馴染みが無いかもしれませんが、イギリスにとっては約90万人という、それまでの戦争とは比較にならないほどの戦死者が出た戦争だったため、非常に重要な日として記憶されています。ボーディングスクールからも、この数週間はRemembrance Dayについての案内が多く届いていました。この時期になると、紙製のポピーの花を身につけた人を様々な場所で見かけるようになります。実はこれも追悼方法の一つで、10月後半頃からRemembrance Dayに向けた募金活動が盛んに行われ、募金をすると紙で作られた赤いポピーの花がもらえるので、それを身につけて追悼の意を示すことができるのです。

Remembrance Dayの募金活動は1921年にThe Royal British Legionという、イギリスの兵士たちとその家族を支援する慈善団体によって始められたそうです。その当時は紙製のポピーではなく、なんとシルクで作ったポピーだったそうですが、作る数と効率を増やすために紙製になったとのことです。それにしても、なぜ赤いポピーがシンボルとして使われているのでしょうか?そのルーツは『フランダースの野に』という一篇の詩にあります。この詩はジョン・マックレーという医師が第一次世界大戦で戦死した友人の葬儀のために書いた詩で、「フランダースの野にはポピーが揺れる 果てまで続く十字架の合間を縫うように…」と戦場に咲き渡るポピーの花が印象的に使われています。その詩が多くの人の共感を呼び、戦争記念のシンボルとして使われるようになったそうです。ちなみに、イギリスの街を歩くと白いポピーをつけている人もたまに見かけますが、「戦没者を称えるのを避けたい」という人が、「平和の象徴」としてつける傾向にあるようです。

全国的に行われるRemembrance Dayの募金活動ですが、ポピーを付けることに対しては一部のイギリス人でも「本当に戦没者を想ってつけているのか疑問だ」「つけることが社会的に正しいとされているからつけているだけだ」「愛国心を強要されたくない」などと複雑な気持ちもあるようです。しかし、形だけになってしまっている部分があるにしても、「戦争が起こって人がたくさん傷ついた」ということに思いを馳せるのはやはり必要であり、私を含め戦争を経験したことのない世代の義務だとも思います。未来を担う子供たちにこそ、学校で貰った紙製の赤いポピーをきっかけに、戦争の悲惨さと「二度と起こしてはいけない」ということを学んでほしいと思います。

小島