日本の妙な「公平感」

日本の妙な「公平感」

先日、とある大学教授とお話する機会がありました。出身は韓国ですが、日本在住は10年以上、アメリカにも住んだ経験があり様々な経験をお持ちの方です。こんなご時世ですので、コロナの話になり…さらに教育の仕事に携わるもの同士、自然とリモート授業の話にも及びました。

彼女によれば、いまだに多くの日本の大学は今年度の授業は全て「録画済」のビデオを配信する形となっていて、少人数で集まるゼミだけは対面で開催しても良い、ということになっているそうです。Zoom等を利用した「ライブ」配信の授業はほとんど行っていないに等しく、生徒からの発信は課題の提出にとどまっている、というのが、日本の大学の実情だそう。それは、双方向のやりとりにこそ学校で学ぶ意味がある、とすれば、やや残念な実情かもしれません。このような現状になる理由としてWi-Fiの問題が挙げられます。日本の場合、大規模なマンションには備え付けのWi-Fiがあることが多いですが、いわゆるアパートや一軒家には備え付けは無く自分でWi-Fiを設置・設定しなければなりません。よくニュースでも見かけるように、携帯電話の電波が4Gだ!5Gだ!と私にもわかりませんが、どんどん便利になっていく中で、Wi-Fiを設置しよう、と思う学生が少ないようです。通常であれば、大学が無料のWi-Fiを提供していますから、自宅では携帯電波で凌ぎ、必要な時には大学でWi-Fiを使えばいいや、という感覚ですね。しかしながら、今のように在宅で「ライブ」の授業を映像付きで受けるシチュエーションになった場合、相当なデータ量をやりとりしますので、携帯電波だけでは到底対応できません。こうなると、Wi-Fiが整備できない生徒がいるので、そういった生徒はライブ配信の授業に参加出来ない、ということになりますね。すると…参加できる生徒と参加出来ない生徒がいるのはよろしくない、という判断になるのが日本の特徴。「公平」に授業が受けられるよう、ライブ配信はなしにしよう、という方向になるわけです。例の大学教授いわく、生徒の反応が分からず、課題だけでは評価しきれないところがやはりあるそう。そこでゼミを開催しようとすると…地方出身者の生徒は授業がないならということで実家に帰っている生徒が多く、大学に来れる生徒が「全員」ではないので、やはりここでも「公平」ではないということでゼミも開催しにくいとなり、八方塞がりです。

一方イギリスの場合、ある意味、携帯電波が良くない上に、元々在宅での仕事がしっかり根付いていますので、水道・ガス・Wi-Fi!というレベルで自宅での必須アイテムなのです。イギリスのWi-Fiは言うまでもなくトラブルも多いですが、無料のWi-Fiだけに頼らず各人が整備している、のが現実です。また、ボーディングスクールはそもそも多くの留学生を受け入れていることもあり、時差もあることから、ライブ配信の授業は行うが、参加が難しい場合には無理せずともよい、その代わり、時差を配慮しながらチューターの先生とはこまめに面談を行ったり、授業参加の代わりに課題を提出したり・・・・“みんな違ってみんないい”とにかくフレキシブルです。

コロナ後、度々ボーディングスクールのリモート授業については考えてきましたが、こんなところでまた日本との考え方の違いを感じた次第です。もちろん、私はその大学教授の方には、ボーディングスクールのリモート授業の良さを散々PRいたしました!!

後藤