God Save the Queen:時代の変化

God Save the Queen:時代の変化

私が留学した15才の時から今までずっとクイーンエリザベス二世の存在は当たり前のように私の身近にありました。

まだイギリスの貨幣が12進法であった時代です。そもそも12進法というものがこの世の中に存在することを初めて知り、お金の扱いに慣れるのに時間が掛かると同時にコインの重さに驚いたものです。もちろんすべての紙幣、コインには彼女の横顔がありました。サマセットモームの「月と6ペンス」に出てくる6ペンスは特別でクリスマスプディングの中には必ず入っているものであり、そこにクイーン以外のコインがあることさえ想像が出来ません。10進法に変わっても紙幣にもコインにもクイーンの顔がありました。他国のように時代によって紙幣やコインの「絵」が変わることはなく、つまり今生きている人達のほとんどはイギリスのお金と言えばクイーン以外にはなかったということです。

私が留学した時に最初に覚えた歌が国歌のGod Save the Queenでした。日本では君が代を歌う/歌わないで賛否両論ですが、イギリスでは学校でも式典の最後、なんと昔は映画館でも映画終了と共にGod Save the Queenが流れ、人々は直立し国歌が終わるまで館外には出られなかったものです。これがクイーンの葬儀の日からGod Save the Kingに変わりましたね。

イギリス人にとってクイーンのいないクリスマスの日の午後はこれからどう過ごすのでしょう。クリスマスの昼の正餐でたっぷりお腹を満たし、家族並びに親族全員でゆっくり居間のソファーに体を埋め、うつらうつらとしながらクイーンのスピーチを聞くという何十年も続いた習慣が変わる時なのかもしれません。

このようにクイーンはイギリスの人々の暮らしに深く溶け込んでいました。外国人の私でさえ、このあまりにも身近にあった存在が消えるということによってイギリスの何が変わるのかがまったく想像できません。一時代が終わる音が聞こえ、寂しさを感じます。

渡邊