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スネ夫君と舞妓さん

26th Oct 2018

1996年にプレップスクールに入学したころは、日本から来たと言えば、「毎日着物を着て床に座って食事をするのでしょう?」とか、「小さなお風呂に家族全員でぎゅうぎゅうになって入るんだよね」と、日本に対するステレオタイプを次々に投げられた記憶があります。「毎日カメラを首にかけてなんでもパシャパシャ撮るんだってね」というのもありました。なぜそんな一時代前の、それも高度成長期のイメージも持っているのかと不思議に感じていましたが、初めは訂正することもできずもやもや感が残っていました。その理由は後日、地理の教科書の「アジア」のページで知りました。そこにあるイラストは、眼鏡の中の目がひきつったスネ夫君の集団がカメラを持って団体旅行をしている姿と、舞妓さんのような煌びやかな女子たちがちゃぶ台で朝ごはんを食べていたものでした。それを見た後は、日本のイメージはこんな適当なものなのかとしょんぼりし、授業で日本に関する事実や意見を述べたいときも、できるだけ伏せていました。なんて卑屈な少女だったことか!

この20年で、日本を題材としたハリウッド映画が上映されたり*、インターネットとSNSの普及により、美しいジャパン、おいしいジャパン、へんてこなジャパン、歴史深いジャパン、オシャレなジャパン、など様々な観点から見た映像や写真で気軽に見ることができるようになりました。日本政府の「クールジャパン」戦略がどれだけ貢献しているのかは定かではありませんが、確かに日本と言えば「ベリークール」な場所だというのが今や常識になっています。ロンドン中心部に昨年度オープンした「ジャパン・ハウス・ロンドン」は、日本の文化や魅力などを発信する拠点施設として、世代を超えて注目されていると聞きます。

こういった日本ブームの中、昔々に留学した身としては、今になって後悔する部分と、今の留学生の皆さんを羨ましいと思う部分もあります。すでに自分の生まれ育ったところについ少しでも知識を持ってくれているという安心感があるでしょうし、自分の行いがあたかも日本を代表しているという責任感にかられることもないでしょう。また、特に文系科目の授業中のディスカッションや作文問題では、(勿論問われていることに的確に関連することに限定されますが)自分の知識や実体験を基に意見を述べてよいのがイギリス流です。イギリスの学校にいるからといって自分が培ってきた日本での経験を押し隠す必要はなく、反対に活かすことで意見に深みや豊かさがプラスされることもありますし、結果的に点数が加算されることもあるでしょう。留学生の皆さんには、是非アカデミックな面で今までの日本での経験を最大限に生かしてほしいと思います。

*主には、「ラスト・サムライ」、「SAYURI」、「ロスト・イン・トランスレーション」、そしてジブリ作品などが注目されたこと。

矢部