入試に備えて学校を休む
21st Feb 2020
1月~2月といえば、関西や関東で私立中学受験の真っ盛り。2月も中旬を過ぎた今は高校受験で中学生が緊張を強いられる時期となりましたね。
「今ごろ知ったの?」と叱られそうですが、先日、中学受験をする小学生の大多数が入試日前に小学校をしばらくお休みするのが通例と知り、驚きを隠せませんでした。お正月過ぎからろくに学校へ通わない例もあるそうです。入試といえどもそれだけの理由で学校を休んでいいの?そんな対策で受験が上手くいったとしても、将来社会人になった時に「明日は大事なプレゼンがあるから今日は大事をとって会社は休む」なんてことにならない??と、最初はかなり批判的に受け止めてしまったのですが、当事者たちに理由を聞くと、一概に否定できなくなりました。なんと、この時期のインフルエンザの猛威を避けるのが主な理由だとは。確かに自分の子どもの頃と違い、ここ何十年かでインフルエンザの恐怖が激化している気もします。受験のために3年も4年も塾通いをして努力してきた事が一瞬で泡と化するなんて、どうしても回避したいのは尤もなことです。
職業上、当たり前のように馴染んでしまったイギリスの受験事情は?というと。そもそもイギリスの1校のための入試でも1日では試験は終わりません。中学受験でも4日間。渡邊オフィスの留学生が学ぶのはボーディングスクール(寮生活をする学校)ですから、大事な入試前に「学校を休む」という発想がありません。そして、入試会場は自分の小学校なので、当日の移動だのお弁当だのの心配もいりません。先生方は限りなくいつもの授業やテストに近い条件で受験させてくれます。日本の親御さんにできることは祈ることだけ。その次の中高校で受ける検定試験のGCSEやAレベルになると、約1か月半の試験期間中に毎日試験があるわけではなく、科目によりパラパラと試験日が分散しています。受験会場はやはり自分の学校。しかも、試験日が比較的多い後半時期には学校により「自宅学習」の選択肢を与えられるのです。日本から見たらこんな有難いことはありませんね。しかし、留学生のほとんどは学校に残るほうを選ぶようです。帰ろうと思えばガーディアンの家でじっくり試験勉強もできるものの、適度な運動や課外活動、友達とのお喋りなど、いつも通りの息抜きをバランスよく取り入れたいからのようです。
そういえば、かつて受験日に熱を出し、一部の科目を受験できなかった生徒がいた時。在学校やガーディアンが試験を実施する団体と交渉をして、「受けたことにしてくれた」ことがありました。その生徒が在学校でいつも出していた成績を取り入れ、試験結果としてみなしてくれたのです。最初は驚きましたが、似た事例をいくつか見るにつけ、イギリスにはこういった「仕方のない事情」を考慮しようとする体質があることに気付きました。
日本ではもちろんこんなことは起こり得ません。試験で結果を出さなければ言い訳の一切は聞いてもらえない。受験は失敗が許されない、至って潔い世界です。一方、イギリスの受験は「できるだけ受験生が実力を発揮できるような」環境作りができていて、受験生に受験に対するそこまでの恐怖感はないのでしょう。
イギリスの受験にだって問題点は見え隠れしています。ただ、入試のために学校を休まざるを得ない日本の中学受験のことを知り、複雑な思いを巡らせた今回の発見だったことを留めておこうと思ったのでした。
山岸