Marmageddon!

Marmageddon!

“Love it or Hate it!”
「好きな人は大好き、嫌いな人は大嫌い」。イギリスに知らない人はいないお馴染みの広告スローガンですが、商品の正体はあの黒い怪しく光り、独特の臭気を持つペースト。酵母エキスを発酵させたスプレッド、Marmite(マーマイト)です。塩味がきついため、最も一般的な食べ方は、ごく少量のマーマイトをナイフの先にすくい上げ、バターをたっぷり溶かした薄いトーストに薄~く塗る方法。意外にも大雑把な人が多い国ですが、マーマイトを塗るときほど真剣な表情をするイギリス人を見たことがないと言っても過言ではありません。その上、堂々と好き嫌いが大きく分かれると宣伝されていますが、私自身激しく嫌うイギリス人には会ったことがありません。

2週間前のことですが、この国民食が食卓から消えてしまう危機に直面しました。原因はBrexitに対する懸念からポンドがユーロに対し急落したことで、オランダに本部を設ける製造元が値上げに踏み切り、抵抗したイギリスのスーパーマーケットが販売を中止すると発表したことでした。国民はこれをこの世の終わりの戦いを意味するアルマゲドンとかけて、マルマゲドンだと大きく動乱し、店頭に駆け込み大量購入する現象が起こったものの、あまりにも激しく非難されたため、騒動はたった一日で収まったという傑作な話!

実はマーマイトの他にも、イギリス庶民の間で最も人気高い紅茶PGティップス、カップヌードルに値するポットヌードル、日本にも進出したベン・アンド・ジェリーズ(アイスクリーム)やその他様々な日用品も一時販売がストップしたものの、全てを抑えて先ず一番に取り上げられたのがマーマイトでした。今後も価格騒動が続くというニュースには危機感を感じるものの、なぜか笑みを浮かべてしまいます。味気も風味もない料理が多いと非難される中、マーマイトはイギリス国民にとって、見た目からしても味からしてもインパクトの強い国民食です。「普通」と呼ばれることをこっぴどく嫌う国民性から、イギリスの食について話す機会があれば、僕たちにはマーマイトがある!他国の人には到底理解できないこの味、僕たちには五味ならぬ六味があるのだと言わんばかりに自慢してきます。なんて可愛らしい人々なのだろうと思ってしまいます。彼らの自尊心を保つためにも、永遠にマーマイトが存在し続ける未来に一票!ちなみに渡邊オフィスのスタッフは全員マーマイト大好きです!

矢部