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本当の受験対策とは

3rd Mar 2023

東京都は、経済的な事情で十分な受験対策ができず、進学や希望する進路を諦める生徒が多い都立校生の大学進学を支援するため、民間の予備校や学習塾の講師を学校に招いて講習を実施、その費用を負担することにしたそうだ。

このニュースを聞いて、思わず「はぁ?」と声を出してしまった。ニュースを読み上げているアナウンサーは違和感を持たないのだろうか。

入試のためには学校の勉強とは別の勉強をしなければならない。都立、私立にかかわらず、学校では受験用の勉強までは見てくれないので、生徒は塾や予備校で勉強するのが当たり前だ。自分も高校時代の2年間を予備校通いした身だが、もし予備校に行かなかったら確実に大学受験はできなかった。高い学費を出して私立校に行っても、結局は受験勉強は塾・予備校頼み。その費用を出せない家庭の子にとっては至って不利ということだ。しかし、このように親の経済力の格差によって進学が阻まれないようにしようという今回の都の支援は理にかなっているようで、実は“付け焼刃”的な救済措置でしかないと思う。そもそも、学校での勉強とは別に受験用の特殊な勉強が必要という、大学入試のあり方を根本的に見直せば、格差は起きないのではないだろうか?

ちなみに、イギリスには高校生が日がな通う受験塾は存在しない。その必要がないからだ。例えば留学生が過ごすボーディングスクールでは、学校で補習や先生に質問のできる自習時間があり、勉強の進み具合や悩みを相談できる定期的な担任との面談もある。大学受験に関しても、進路進学専門のコンサルタントが常勤し生徒をサポートするし、担任は出願まで一貫して生徒達に寄り添う。(注:イギリスの大学受験は統一システム下で行われるのでサポートがしやすい)Oxbridge受験のワークショップなども開かれる。そう、勉強・受験に関してはすべて学校内で完結するのだ。そして、なんと、イギリスでは大学ごとの入試がない(一部大学を除く)!高2~高3課程で勉強するAレベルやIBが入試にとって代わる仕組みなので、通常の学校での勉強さえしっかりやっておけば、基本、受験に対応できる。

イギリスでもボーディングスクールを含む私立校にいる生徒の方が、公立校の生徒よりも進学率が高いのは日本と同じ。しかし、それは私立校の生徒が塾や家庭教師につけるからではなく、イギリス大学入試のしくみと学校でのサポートに依るところが大きい。日本もいつか学校の中で受験勉強が完結する時代が来るのだろうか。

山岸