性別を教えない?
14th Oct 2022
近年のジェンダー論に後押しされる形で、最近ではボーディングスクールから届く入学書類やアンケートの、お子さんの性別を回答する質問において「Female」(女)、「Male」(男)のほかに「Prefer not to say」(言いたくない)、「Other」(その他)などの選択肢が用意されていることが非常に多くなってきました。私の小学生時代は、女の子のランドセルは赤・男の子は黒、というのが当たり前だったので、時代の変化の速さを感じる毎日です。
先日、BBCの記事で「ジェンダーニュートラルに子供を育てる親たち」という記事がありました。なんでも、特にヨーロッパや北アメリカでは、子供に子供自身の性別を教えずに育てる人が少しずつ増えてきているというのです。性別を教えないだけでなく、性別という概念を意識させないように「he」や「she」、「brother」や「sister」などの単語を使用するのも避け、「they」「them」「sibling」(兄,弟,姉,または妹)などの性別が付与されていない単語で子供と話すなどの工夫もしているそうです。そのような親御さんがジェンダーニュートラルという育児方針に至った考え方としては、「社会的に醸成された性別に対する固定観念に影響を受けずに、自分の好きなものや生き方を選んでほしい」という理由があるとのこと。その親御さん自身が子供時代に、女の子だからといって好きでもないピンク色の持ち物や服を与えられたという苦い経験があったそうです。ジェンダーニュートラル育児の別の利点としては、自分の生物学的な性と、自認している性が異なっていた場合=LGBTQ+だと自覚した場合に混乱が少ないということがあります。
子供が固定観念にとらわれずに本当になりたい自分になれる、というのは基本的にはとても良い方針だと思いますが、それと同時に、生物学上の性別というのは絶対に存在するものなので、ある程度の「枠組み」が無いと、子供が迷ってしまうということにならないだろうか?とも感じました。また、学校や会社など、社会や組織ではどうしても生物学上の性別で分けられている部分もあるので、社会に出て行った際に子供が困惑することが多いのではないかとも感じます。そのため、「あなたは女の子・男の子だから何かを選ばなければいけない」という教え方をやめる場合、「あなたは女の子・男の子だけど何を選んでも良い」、というような方向性がジェンダーニュートラル育児法との折衷案になるような気がしています。とはいえ、価値観の変化のスピードがどんどん加速する現代社会においては、この考え方すら古いのかもしれませんが…
小島