動物たちの役割
12th Mar 2021
先日英国女王が新しいコーギーの子犬を保護施設から譲り受けたというニュースが話題になりましたが、実は首相官邸であるダウニング街10番地にも昔からある役目を負った動物がいるということをご存知でしょうか?首相官邸に住んでいるのは犬ではなく猫で、なんと肩書まで与えられています。その肩書も「首相官邸ネズミ捕獲長(Chief Mouser to the Cabinet Office)」。名前の通り、ネズミを捕まえるという任務を与えられている猫たちです。ダウニング10番外には昔からネズミが多く、ネズミ駆除のために猫を飼うという習慣は昔からあったようです。一説によると、ヘンリー8世の時代にまで遡るのだとか。さしずめ日本語で言うところの「猫の手も借りたい」という気持ちは今も昔も変わらないようです!
また、この猫たちは首相のペットではなく公務員として”雇用”されています。現在首相官邸ネズミ捕獲長として活躍している元保護猫のラリーは、ジェームズ・キャメロン、テレーザ・メイ、そしてボリス・ジョンソンの3人の首相の側で働いてきました。近年の首相の誰よりも長く首相官邸に居続け、激動の歴史を眺め続けてきたのが猫であるというのはどこか牧歌的でイギリスならではの面白みがあると思います。
イギリスでは猫の他にも騎馬警官を乗せてパトロールを行う馬など、働く動物が多く存在します。ボーディングスクールでも、敷地内に住む教師たちのペットが学校内を歩いているという光景もごく日常的に見られます。また、特定の動物であればペットを飼うことを許可されている学校もあります。ボーディングスクールにいる動物たちも生徒たちに寄り添い、サポートをするという役割を果たしています。このように「動物が同じ空間に当たり前のようにいる」という光景は日本の政治的中枢施設や学校では考えられません。動物をただ愛玩の対象としてみなすのではなく、共に生きるパートナーとして扱うという精神の根付いた、動物愛護先進国であるイギリスだからこそ続いてきた風習だと言えるでしょう。
小島