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大学入学共通テスト

22nd Jan 2021

日本の大学センター試験が今年から大学共通入試テストとしてリニューアルし、先週末いよいよ実施となりました。自分がまだ共通一次の時代に受けた試験のことを思い出します。全問選択肢問題という夢のような試験方式に、白紙で出さずともよい安心感に守られ臨んだものです。四択問題にも対応できるよう、四角形の鉛筆まで仕込んで転がしてみたり、「真か偽か」の問題ではすべて回答を真に揃えてみたり、と、あらゆる小手先と誤魔化しを尽くしましたが、結果は「それなり」。選択肢問題でも実力が出てしまうものだと、ヘンに感心した憶えがあります。

さて、この新しい共通入試。何かと話題の英語の問題を見てみました。どれどれ。まずは問題の量が多い!そしてオール読解問題!かつてサービス問題と言われた、必ず点が稼げる文法や発音問題は皆無。最初から最後まで、読まないと解けない、読解しないと正解できない、という当たり前でいて厳しい、まさに実力が曝け出される問題群となっていました。多彩なテキストはスマホのLINEらしき吹き出しのダイアログから抗議文まで、あらゆるタイプの文章を網羅しています。自分が高3の頃、もとより苦手だった読解問題がこれほど並んでいたら、取り掛かる前に心が折れていただろうと思います。もう一つはリスニング問題。これも結構大量です。慣れていないとあたふたして終わりそう。

徹底した読解問題づくしに切り替えたことへは評価したい一方で、「行間を読む」「筆者の気持ちを量る」ような問題が一切見られないことには少し不安が残ります。文章形式も会話文や説明文ばかりで詩や小説の引用文などはありません。恐らく、今回の問題文にあるだけの文章読解ができれば、仕事や生活上で困る場面は少ない英語力に達していると言えるかもしれませんが、もし英語を長く使っていくのだとすると、最終的には文章に書かれていない、奥を読む作業が実は多いということを知っておいたほうがよいと思います。これは母国語でも同じです。その力は次の段階で養っていくのであり、それはやはり教科書では教えられない、実践でしか身につかない力と言えるでしょう。留学生がこれらを意識せずとも自然に身に着けるのは大きなアドバンテージです。

大学共通一次入試が導入されてから30余年。批判は多く聞こえるものの、まずは良い方向への変化を遂げていると思います。依然回答は鉛筆使用ですが、それを転がす受験生の姿は減っていると信じましょう。(笑)

山岸