話題の「あずま」
21st Jun 2019
5月15日にイギリスで日本製の新車両が処女運行を行い、大きな話題を呼びました。ロンドンとリーズを結ぶ南北の既存の路線に新しい日本のハイテク車両が乗り入れたという形です。最高速度200キロ、運行時間を20分短縮、座席は前後の間隔が7センチ広くなり、車体がコンパクトながら全体で100席ほど増えたとのことで、いいこと尽くし。何百もの入札から白羽の矢が立てられたHitachiさんは多いにその知名度をアップさせました。
さて、5月15日、ロンドンのキングスクロス駅から最終到着地リーズ駅へ到着した時のレポートをYouTubeで見てみました。午後1時を過ぎてのリーズ駅はブラスバンドの生演奏と駆けつけた人々での喧噪の中、堂々と入線します。鉄道ファンと思しきそのYouTuberの報告を見て驚いたのは、なんとこの電車は約4分遅れての到着。このYouTuberの方はレポートしながら、「たったの数分、たいしたことじゃない」と明るくコメント。これだけ注目されている時に遅延とは、さすがイギリス、と唸りました。ご存知の通り、イギリスでが電車は定刻に来ないことは話題にもならないほど常識なのです。しかし、これが日本だったら辛口の避難を浴びたことでしょう。
日本の鉄道の時間の正確さは世界に誇るものですが、それはクオリティーの高い電車を生産できることだけに因るのではなく、当然ながら「時刻表通りの運行が当たり前」であり、それを死守しようとする日本人の努力があるからです。輸出するHitachiさんだって、時刻表管理までは一緒に輸出できなかったはずです。このように、ジャパンテクノロジーをイギリス人の感覚で運用した時には日本のそのままを取り入れることは不可能で、必然的にイギリス流に転換されます。ただ、イギリスの、よいものは取り入れ、性に合わず土台真似が無理な部分には目をつぶるというやり方は、異文化を取り入れる時のコツなのかもしれません。
さて、約3年前の車両のお披露目の時には電車の先端の脇腹部分にひらがなで「あずま」と入っていたのですが、今回見たところこのひらがなは無くなり、電車の先端部分に“AZUMA”とだけあります。デザイン的な問題だったのだと思いますが、Azumaだけのほうが違和感なくイギリスの風景に溶け込みます。いずれ出張でこの新しい列車に乗って日英融合を体験してみたいと今から楽しみです。
山岸