イギリスの笑い
17th Mar 2017
近年、映画やテレビドラマが見放題の動画配信サービスが世界中で人気となっています。無制限となるとついつい中毒的に見てしまうようで、欧米などでは加入=自ら周りとの関わりを絶つ「社会的自殺」だと皮肉な呼び方をされていますが、国内外の作品が見られるということで私は誘惑に負け加入してしまいました。一度踏み込んでみると、懐かしいイギリスの作品ばかりに目がいってしまい、その中でもブラックユーモア、風刺そして卑下があふれるイギリスらしいコメディ番組を見ては失笑の嵐に襲われています。日本に住んでいらっしゃる留学生の皆さんも、日本の明るく滑稽な(時にはシュールな)お笑いだけでは物足りなくなる時があるのではないでしょうか。
とても大ざっぱなイメージですが、日本の大衆向けのお笑いというと、大人にも子供にも分かりやすく、みんなが手をたたき笑い転げる絵が浮かびます。笑いを誘うような表情で笑いを期待する。それに対してイギリスの笑いはさりげなく言うことに意味があり、見る側の理解度とユーモアのセンスを挑発する一種の芸術のように捉えられます。面白おかしいボケ・ツッコミの作り話というよりは、あらゆる人間性や傾向、社会問題をちょっとデフォルメして気の利いたユーモアある返しで笑いをとるのが極みのようです。また、人種差別、死、文化的な禁忌など、日常では触れてはいけないようなタブーにも切り込みます。考え抜かれたコメディの中で表現されると、普段は話題にできないテーマでも笑えてしまう。傍から見ていると、それが潤滑油となって逆に社会が丸く一つになり、重要な役割を果たしているような気がします。
笑いは実は学校でも重きを置かれています。例えばイギリスの成績表には「ユーモアのセンスがある」「彼/彼女のユーモアが好き」などと、これを高く評価するコメントが頻繁に登場します。ただのプラスアルファのコメントではなく重要な評価対象なので、逆に勉強だけできてユーモアがないのは好ましくありません。実際社会に出たときにユーモアは人間関係がうまくいくために必要な能力となりますので、それが学生のうちから求められるのはイギリスらしいですね。
さて笑いは笑いでも、作品やトークショーに中の刺激が強いものと、日常の会話で登場するものが大きく違うのがイギリスです。後者についてはまたの機会に書きたいと思います。
矢部