母の勇気
11th Mar 2016
「渡邊さんはどうしてこの仕事をされたのですか?」と良く聞かれます。立派な理由を述べたいところですが、実は私の母が15歳の私を単身英国に留学させたことに端を発します。大正生まれの母はどんどん新しいものを取り入れ、何事にも恐れず挑戦するとてもポジティブな性格。反して子供時代の私は臆病で、心配性。スキー、スケートと怖がる私の背を押し、いろいろな経験をさせました。その集大成が「留学」だったのかもしれません。当時の日本は海外旅行をする人は大変稀で、外貨持ち出し規制というものもあり、留学という言葉さえ日常に使用されていませんでしたから、高校生の留学などもってのほかだったはずです。母本人も外国に行ったこともなければ、英語力も低かったにもかかわらず、英国大使館、日銀をまわり、情報を集めたようです。そんな苦労は全く知らない私は英国のことなど何も知らず、まして英語も出来ないにも関わらず、母の提案した単身留学という未知との遭遇になんとなく、乗っかってしまったという何とも主体性のない話です。
この母にいかに先見の明があったのか、そしてそれが私の人生の幅をいかに広げ、実りの多いものにしたのかに気が付いたのは大人になってからでした。この素晴らしい機会をもっと多くの子供たちに持ってもらいたい、始めは同胞を作るような気持でスタートした渡邊オフィスですが、ますます増えてきた海外との需要にこの仕事を始めて間違いはなかったと思います。
最初に子供の道を切り開いていくのは親。自分の目で見えない世界に子供を信じて送り出す親の勇気とはつくづくすごいものだと思います。私事で恐縮ですが、2月下旬に母を見取りました。私はもちろんのこと、やはりその道を歩んだ娘もこの偉大な母に感謝です。たぶんこの精神は孫へも受け継がれていくことでしょう。
最近、元留学生からの問い合わせが入ってきています。結婚して、子供が出来、やはり自分と同じ経験をさせたいと願う親心ですね。渡邊オフィスから巣立っていった留学生はほぼ1,000名。その子供達の子供、そしてまた次の世代へと受け継がれていくと思うとワクワクします。
渡邊