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ノブレス・オブリージュ

2nd Sep 2022

先日、あるプレップスクールから校外学習(school trip)の連絡が届きました。近隣の古城の見学や敷地内でのキャンプという内容で、内容自体は珍しいものではないのですが、学校からの案内に書かれていた「~家のご協力のもと…」という部分が目を引きました。もしや…?と思って調べると、キャンプが行われるのは、やはりそのご家族が代々所有している古城と敷地であることが分かりました。地方貴族の子息がボーディングスクールに通っているのは全く珍しいことではありませんが、普段から取り立てて学校からお知らせが届くわけではないので、今回のような記載があると、改めて生徒たちの出自について認識させられます。

貴族が当たり前のように存在しているイギリスでは、古くから浸透している道徳観念があります。それが「ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)」です。意味合いとしては「社会的・財力的地位が高い者は責任と義務を負う必要がある」というものです。王室のメンバーであっても兵役につくということや、王室による盛んなボランティア活動は、ノブレス・オブリージュの考え方に裏打ちされたものだと言えます。また、イギリスの議会を構成する庶民院(下院)は報酬が出るのに対し、貴族院は設立されて以来、今日に至るまで無報酬です。王族や貴族の子息を育てるボーディングスクールも例外ではなく、チャリティイベントが年間を通じて無数に行われています。また、多くの学校がCCF(Combined Cadet Force:軍事訓練を通じてリーダーシップや自立性を養うプログラム)を行っているのも、「人の上に立つ者は、有事には先陣を切って行動しなければならない」という信念が根底にあると考えられます。

「社会からの恩恵を受けている分を社会に還元する」という考え方は、様々な分断が生じている現代社会だからこそ、社会の維持に有効な考え方だとも思います。渡邊オフィスの留学生たちも、将来はきっと様々な人を引っ張っていくような立場につくのだろうと期待しています。その時は、ボーディングスクールで身につけた考え方を活かして、人や社会に貢献できる人物になっていて欲しいと願っています。

小島