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「言い訳」

24th Oct 2025

もう何年も前のことですが、ある留学生Aさんが寮で友達と小競り合いをした結果、ちょっとした失敗をして寮長から罰を受けてしまったことがありました。Aさんはすぐに非を認め、深く謝罪したのですが、いつも冷静で信頼も厚いAさんの失敗に、寮長はAさんに事情を聴こうとしても、Aさんは一言も説明せず、「ごめんなさい。」の一点張り。寮長はその潔さ(誠実さ)を評価しながらも、彼がどうしてその失敗に至ったのか、今どう感じているのか、など一切話してくれなかったことを残念に思う、とご両親へ報告しました。後日、親御さんがAさんと話したところ、Aさんは「何か言えば言い訳になると思ったので何も言わなかった」と話していたそうです。

失敗をしたときに理由を述べることは「言い訳」と捉えられがちです。わが身を振り返っても、言い訳がましいことを言うと後味が悪いだけでなく、相手をもっと不快にさせてしまい、何もいいことがない!「謝るときに余計なことは言うな」とは正しい教訓で、それを忠実に守ったAさんの行為は、決して間違ってはいないのです。ただ一方で、イギリスではこの寮長のように、謝罪の後に「なぜそうなったか」「どうすれば防げたか」を説明することが、誠実さの一部と見なされることもあるように思います。謝罪だけではなく、状況を共有することで、相手との信頼関係を築こうとする文化、ともいえるかもしれません。

もちろん、どちらの文化にも共通しているのは、「まず誠実に謝ること」の大切さ。謝罪の言葉は、相手への敬意であり、自分の責任を受け止める姿勢でもあります。説明や反省を述べるなら、相手に謝罪の意がしっかり伝わってから。述べる内容やタイミングも、相手の気持ちを十分考えて判断すべきでしょう。Aさんは、もしかしたら失敗した数日後にでも、「あの後でよく振り返ってみたら・・・」と寮長に話しに行ってもよかったのかもしれませんね。

イギリスのボーディングスクール留学とは、こうした習慣や人の感じ方の違いなどを肌で感じながら、人との距離感や言葉の選び方を柔軟に調整していく経験でもあります。 失敗をするということも、人と誠実に向き合い、異なる価値観を受け入れながら、謝り方や自分の伝え方を磨いていく、まさに人間力を育てる素晴らしい機会です。

山岸