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大人の国、英国

27th Jul 2010

今、日本事務所では30周年記念パーティーの準備で大忙しです。そのせいか30年程前のことを思い出してしまいました。(忙しすぎてタイムリーにブログをアップするのを忘れてしまいました!)

英語もよくわからないのに外国のロックばかり聴いていた10代の私。パンクロックが英国で流行していた70年代の終わりごろのある日ふと、「パンクの曲なのに“女王陛下万歳(God Save the Queen)”ってどういうことだろう」という疑問がわきました。何しろ“God Save the Queen”といえば英国国歌と同じ題名です。それに最近ではあまり見かけませんが、1978、9年のパンクといえば、ミュージシャンとは言いながら楽器もろくに演奏できず、汚い服を着、髪の毛を逆立て、顔に安全ピンを刺し、しょっちゅう問題を起こす反体制の象徴でした。そんな音楽なのに、どうして“女王陛下万歳”なのかと歌詞をよく見てびっくり。「女王陛下万歳。ファシスト体制。英国には未来はない。」あまりにもストレートな国家体制批判の歌でした。「こんな反体制的、女王批判の歌を発売できる英国って懐が深い。」というのが30年あまり前に、初めて私が“英国ってすごい”を認識した瞬間でした。もちろん“懐の深い”英国でも、そんな曲の発売には紆余曲折があったようですが、日本では体制批判の曲の発売もヒットもまず考えられません。

その後、この伝説のパンクバンド、Sex Pistolsを売り出した陰の仕掛け人達がいることを知りました。一人はのちに音楽プロデューサーとして多くパンク、ニューウエーブバンドを世に出し、ヒットさせ今年肺気腫で世を去ったマルコム・マクラーレン、そしてもう一人は英国ファッション大御所デザイナーとしていまだに君臨するビビアン・ウエストウッド。彼女はファッション界への貢献が多大であったとして2006年に大英帝国勲章Dameの称号を授与されています。反逆のファッションデザイナーを、貴族に昇格させる英国には30年たっても大人の余裕を感じます。

吉岡真樹